インタビュー / 第0号案件

美容師の相談から、株式会社LAYERが生まれるまで

美容師として17年現場に立ってきた桒田浩平さんが、AIで試作し、中井聖(SaaS飯)へ相談。まず店舗を持ち、現場で検証する道を選び、羽エクステ専門店と株式会社LAYERの事業化へつながるまでを、本人インタビューをもとに整理します。

中井聖(SaaS飯) × 桒田浩平 対談場所:Apps STUDIO OSAKA 第0号案件 THE LAYER
対談中の中井聖(SaaS飯)と桒田浩平さん
中井聖(SaaS飯) × 桒田浩平Apps STUDIO OSAKAでの対談。美容サロン向けSaaSの相談から、LAYERの事業化へ。
01

美容師17年、現場が好きだった。

中井聖(SaaS飯)と桒田浩平さんが対談している様子
対談中の中井聖(SaaS飯)と桒田浩平さん。まずは桒田さんが美容師になった原点から聞きました。
中井(SaaS飯)

まず桒田さんが何者かというと、美容師として現場に17年立ってきた人です。そもそも、なんで美容師に?

桒田

思春期の頃に、気に入っていた髪型を左右でまったく違う仕上がりにされたことがあったんです。あまりにも納得できなくて、自分で切ったほうがいいと思った。中学2年生ぐらいから4年ほど、自分で髪を切るようになりました。

桒田

それを続けていたら、友達からもカットをお願いされるようになって、お金をいただくようになったんです。人が喜んでくれて、お金もいただける。こんなに素晴らしい生き方があるのかと思って、美容師になりました。人をかっこよくしたり、かわいくしたりして喜ばれることが嬉しかったんです。

中井(SaaS飯)

最初から「美容師になる」と決めていたというより、自分で切ってみる、友達が喜んでくれる、その反応が次の仕事につながっていく。桒田さんの場合、仕事の入口に「目の前の人が変わる瞬間」があったんですね。

中井(SaaS飯)

17年やっていて、いちばん好きな瞬間ってどこですか。

桒田

お客様に喜ばれた瞬間ですね。数字を追うことより、目の前のお客様に本当に喜ばれる技術と提案を磨くこと。それが結果として売上にもなるし、美容師が長く続く理由にもなると思っています。

中井(SaaS飯)

その考え方、あとで出てくるLAYERの設計思想にそのままつながるんですよね。

02

最初の相談は「美容サロン向けのSaaS」。

中井聖(SaaS飯)が桒田浩平さんに話を聞いている様子
美容サロン向けSaaSの相談から、非IT領域の現場をどう事業化するかへ。会話は実務の話に寄っていきます。
中井(SaaS飯)

で、その桒田さんがある日、僕に相談をくれるわけです。覚えてます?最初に何て言ったか。

桒田

「美容サロン向けのSaaSを作りたいんです」でしたね。美容業界で長く過ごす中で、顧客管理の粗さを課題として感じていました。現場で毎日感じていた不便を、自分でツールにできないかと考えていました。

中井(SaaS飯)

現場のプロが自分でSaaSを作りたいって発想になるの、実はすごく今っぽいんですよ。AIで「作ること」自体のハードルは下がっているから。ちなみに、なんで相談先が僕だったんですか?

桒田

システムを作って成功している方の話を聞きたかったんです。SaaS飯さんを知ったきっかけは、Xでたまたま投稿が流れてきたことでした。まず名前に興味を持ちました。SaaSで飯を食っている人なんだ、と。

桒田

投稿をたくさん読み込んだというより、1つ2つ見た段階で、この人に会って話を聞いてみたいと思いました。

この時点で桒田さんは、バイブコーディング(AIに相談しながらコードを書き、動く形に近づけていく開発スタイル)で自分なりの試作品まで作っていました。課題感を話すだけではなく、まず手を動かして形にしようとしていたことも、相談が具体的に進んだ理由の一つでした。

03

「SaaSからじゃなく、まず現場」という見立て。

対談中に笑う中井聖(SaaS飯)と桒田浩平さん
SaaSを作りたい相談から、まず現場を持つ話へ。硬い事業相談だけでなく、自然な笑いもある対談でした。

そのとき返したのは、たぶん期待と真逆の答えでした。SaaSを今すぐ作るより、先に現場を持ったほうがいいのではないか、という話です。

理由はシンプルで、AI時代はSaaSそのものがコモディティ化していきます。作れること自体の価値は下がる。逆に、チャンスは非IT領域の現場の側にある。

だから順番を逆にしましょうと。SaaSから作り始めるのではなく、まず自分でサロンを作り、そのサロンで自分たちの仕組みによって売上が上がることを証明する。売れるところまで確認できたら、それは初めて商品になる。

作れるだけでは、事業にならない。現場をつくり、売上を証明し、売り先までつくる。
中井(SaaS飯)

「そこまでSaaSをやりたいなら、自分で店舗を作って、その店舗の売上に貢献することが分かってから外販を検討しろ」って言われたわけですよ。SaaSを作りたくて相談したのに(笑)。正直どう思いました?

桒田

最初はSaaSを作りたい気持ちが強かったので、正直ちょっと驚きました(笑)。でも、言われてみると、SaaS飯さんの言う通りだなと思いました。いざ自分の責任で起業するとなったときに力になるのは、自分自身の経験しかないと感じたんです。今まで培ってきたものを、どう次の挑戦に活かすかを考えるようになりました。

04

羽エクステ専門店から、株式会社LAYERへ。

対談中の中井聖(SaaS飯)と桒田浩平さん
羽エクステ専門店と株式会社LAYERの事業化へ。子会社として一緒に進める理由も話しました。
中井(SaaS飯)

しばらくして桒田さんが持ってきたのが、「羽エクステの専門店をやる」という企画でした。なんで羽エクステだったんですか?

桒田

美容師の時間生産性が低くなりやすい構造を、ずっと課題に感じていました。シャンプーやドライヤー自体には直接料金がつきにくいので、どうしても時間あたりの生産性が落ちてしまう。そこを変えられる商材として、最初からシャンプーなしで提供できるエクステに興味を持ちました。

桒田

ただ、主流のシールエクステには、付け根が見えやすい、髪質が合わない、取れやすい、外すときにベタつきが残るといった課題も感じていました。羽エクステなら、その課題をクリアできる可能性があると思ったんです。

中井(SaaS飯)

ここで、単なる外部支援ではなく、Appsグループの完全子会社として一緒にやることになりました。これは僕の側にも理由がありました。

中井(SaaS飯)

桒田さん側から見たときに、完全子会社でやるメリットはどこでした?

桒田

自分としては、現場の実務に集中できることが大きかったです。税務や法務などのバックオフィスまわりを一人で抱え込むのではなく、SaaS飯さんやAppsグループの顧問税理士さん、顧問弁護士さんに相談しながら進められる。そこはかなり安心感がありました。

桒田

それに、生成AIやSaaSを使った集客、予約管理、業務効率化も積極的に提案してもらえる。自分だけでサロンを作るのではなく、現場で培ってきた技術と、Apps側の仕組み化の力を合わせて事業にできることが、子会社として一緒にやる意味だと感じました。

中井には以前から、AI時代は非IT領域にチャンスがあるという読みがありました。ソフトウェアを作れることの優位性が相対的に下がるほど、現場、接客、体験、身体性、信頼関係といった、人間にしかできない価値提供の重みが増していく。

その文脈で見ていたのが、ラグジュアリー層やナイトビジネス領域の美容需要でした。羽エクステが、ラグジュアリー層や夜の仕事に携わる女性から広がり始めていることを知り、自分が参入したい市場と重なったのです。

そこで中井から桒田さんに、「これは子会社としてやらせてほしい」とお願いしました。桒田さんには、SaaS飯のDon’t Work!(働くな、没頭しろ)的な思想や、Appsが掲げる「あらゆる挑戦を支援する」「AIに任せ、人は没頭する」「現場が報われる構造をつくる」という考え方に共感してもらった。AIを中心に動く小さく強い会社を各業界に生み出していく方向性も、羽エクステの事業化と重なっていました。桒田さんと一緒にやることが決まってから株式会社LAYERを作り、社名も桒田さんが考えました。

AI時代ほど、非ITの現場と、人間にしかできない価値提供にチャンスがある。
中井(SaaS飯)

現場では今、何を検証しているんですか。

桒田

施術と講習、認定の仕組み、それからお客様のフィードバックです。現場を持っているから、何が本当に喜ばれるかがその場でわかる。それを仕組みにして、他のサロンにも広げられる形を検証しています。

役割分担として、LAYERは現場導入、講習、認定、現場フィードバックを担います。Apps側は、SaaS・AI・メディア送客・業務管理の土台づくりで支援します。この流れを株式会社LAYERとしての事業化へつなげ、アップスベンチャーズの第0号案件として整理しました。

中井(SaaS飯)

LAYERとして、これからどこまでやりたいですか。

桒田

美容師が顧客価値で選ばれて、正当に報われる仕組みを作りたいです。雇用形態で人を縛るのではなく、実力とお客様への価値、貢献に応じてプロとして報いる。The Layerの現場から、それを美容業界に広げていきたいと思っています。

05

第0号案件が示したもの。

対談で大きく笑う桒田浩平さんと中井聖(SaaS飯)
第0号案件として、現場の経験をどう次の挑戦に変えるかを本人の言葉で振り返りました。

この一連の流れは、アイデアにいきなり出資する話でも、作れる人を採用する話でもありません。現場を持っている人、専門性がある人、没頭できる人と一緒に、小さく事業を立ち上げて、売れる形まで整える。

これを偶然の1案件で終わらせず、再現できる共創プログラムにしたのがアップスベンチャーズです。桒田さんはその第0号です。

中井(SaaS飯)

最後に、現場にいながら「いつか自分の事業を」と思っている人に一言もらえますか。

桒田

自分で思い描いたものを、自分自身で作っていくことは面白いです。一度は経験してほしいと思います。

桒田

僕も元々はSaaSを作りたいと思っていました。でも、自分の責任で起業するとなったときに力になるのは、自分自身の経験でした。今の仕事で自分が培ったものが何なのかをきちんと理解して、それを次の挑戦に活かしてほしいです。

AI時代に、自分で選べる側にいるために。